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デザイン判例帳

アパレルデザインを中心に,デザイン関連の裁判例などをメモしていきます。

早めに模倣したもの勝ちなのか?

初めての記事が法務系Advent Calender 2015のエントリー記事ということで,大変緊張しておりますが・・アパレルデザインの保護に関連して気になっている論点について書いてみようと思います。

 

アパレルデザインは不競法2条1項3号で保護されることが多いですが,意外と問題になりがちなのは,その保護の始期です。

例えば,あるデザイナーがコレクションで発表した未発売のデザインを,いち早く模倣して商品化・販売した者がいた場合に,そのデザイナーは模倣者に対して3号に基づく請求ができるのでしょうか。ファストファッションが本家よりも早く販売するといった事態がままある現状においては,意外と問題になり得る論点ではないかと思います。

また,個人のデザイナーの場合,商品化・販売にまで至らせる資力がないことも多く,試作品しかない段階で大手企業に模倣されるといった事態もあり得えます。

 

条文をみてみると,不競法19条1項5号イは「日本国内において最初に販売された日から3年を経過した商品」の形態模倣行為については3号の適用を除外する旨が定めてられているものの,「最初の販売の日」が保護期間の開始時点を意味しているのか,それとも適用除外時期の開始時点,すなわち保護期間の終了時点の起算点としての意味をもつに過ぎないのかは定かではありません*1

 

この「3号による保護の開始時期」については,以下のとおり両方の考え方があるようです。

①日本国内で販売開始がされていなければ保護されない(上記前者の考え方)*2

②必ずしも販売開始がされていなくても保護される(上記後者の考え方)

②については更に色々な考え方があります。

・「発売前であっても,発売に向けて客観的に十分な準備を進めていたような場合には,営業上の利益の侵害が認められるとして訴訟上の保護を与えることは当然であるし,刑事罰の対象ともなり得る」*3

・「営業上の利益を害するとして2条1項3号の保護を与えるためには,商品化が完了していることのみならず,販売に向けた準備に着手していることまで必要」*4

・「商品化の時点で,保護に値する労力,費用の投下は終了しているので」「デッドコピーしうる商品化がなされた時点から保護が開始される」*5

・試作品や設計図の完成図の段階であっても,その模倣を違法と解すべき*6

 

比較的最近の裁判例には,以下のようなものがありました。

・「費用や労力を投下して商品化したのみならず,これを市場に置く行為をしたか否かによって判断されるものというべき」として,先行者の商品が未だ市場におかれていないことをもって保護を否定したもの*7

・「「商品の形態」とは,これに依拠して実質的に同一の形態の商品である「模倣した商品」を作り出すことが可能となるような,商品それ自体についての具体的な形状をいうものと解される。」「不競法2条1項3号の商品形態の保護が,実際に商品の販売が開始される前には一切及ばない趣旨とまでは解されないものとしても,そこでいう商品の形態は,前記のとおり具体的なものであることが前提であるものと解される。」として,抽象的なデザイン画について「形態」該当性を否定したもの*8

 

日本ではなく海外のコレクションで発表された場合はどうなのか・・・等と考え始めると,なかなか難しい問題であるように思います。

個人的には,3号の目的が先行者利益の保護にあることからすると,「商品化」していればOKという立場がしっくりくるのですが,「商品化」概念にも幅がありそうで悩ましいです。

 

結論は出ませんが,今後の展開に注目したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1:小野昌延編著『新・注解 不正競争防止法【第3版】下巻』(2012)1304頁[泉克幸執筆]参照

*2:山本庸幸『要説不正競争防止法〔第4版〕』(2006年)386頁

*3:産業構造審議会 知的財産政策部会「不正競争防止法の見直しの方向性について」(平成17年2月)49頁

*4:金井重彦,山口三惠子,小倉秀夫編著『不正競争防止法コンメンタール〈改訂版〉』(2014)439頁[町田健一執筆]

*5:田村善之『不正競争防止法概説〔第2版〕』(2003年)312頁

*6:渋谷達紀「商品形態の模倣禁止」F.K.バイヤー教授古稀記念日本版論文集・知的財産と競争法の理論(1996年)383頁

*7:東京地裁平成24年 1月25日・平成23(ワ)第15964号

*8:東京地裁平成27年 9月30日・平成26年(ワ)17832号